表記について

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5

暗くも整った造りの石造りの廊下に、私たち二人の靴音が交互に響く。
此の島の空気はどんより昏く、そして底冷えのするような、寒気が走るような……寂しい雰囲気に覆われている。
その中に更に闇を抱え込むように建つこの迷宮に、もしあのまま一人で足を踏み入れていたら…。
ーー先程の魔物との戦闘すら、うまくいかなかったかもしれない。
手を引いてくれる彼の温もりが、その存在が。
こうして、先を目指す気持ちを支えてくれている……のかも知れない。

やがて通路は、静かに流れ落ちる滝が沿う欄干へと道を曲げた。
細い廊下に小洒落た手すり。
そこを二人で並び歩いているうち……。
遠い記憶の何処かで、そういう場面があったようなーーでもそれでいて自分には身に覚えのない、不思議な感覚に覆われ始めた。
此処に来るのは、私には全く初めてで…。
ましてや、此処に似たような場所を探索した覚えもない。

……それなら、何故……?
ーー本当にそれは、私自身の記憶…?

ふと、そう思った時だった。

ほんの一瞬ながら、はっきりと焼き付く映像。
……まただ…。また……!
ーー足が自然と止まる。
遺跡の探索を進める中でも、度々脳裏にちらつき…。
そしてそこで、竜との死闘を終えそのまま眠り続けていた私が見た夢に……。
本当に存在したのか、直に見たわけではないけれど。
確かにこの目で見た、"今では失われた国" という、未知の場所に居たとされる二人。
その二人の醸す雰囲気は、親しく和やかに見えた。

ーーそれでも…。
私自身の心には、その光景が重くのしかかる。
「…や……、いや……!」
ーー見たくない。見たくないの……!
でも、どうして私の中に勝手に入ってくるの……?

胸が苦しくなる思いに、視えてしまう映像を振り払いたくなる気持ちに。
頭を抱え込むように、両手でこめかみのあたりを押さえ、目をぎゅっと閉じた。
「セツナ様…!」
呼び声と同時に、急速にーー体が勝手に動いた。

顔を覆う暖かい感覚に、はっと目を開けると…。
直ぐ目の前に、彼の姿があった。
「………⁈」
「ーーそこに、蛇が」
呆然としたままゆっくり首を動かす。
と、確かに。
側の手すりに、床面にーー鎌首をもたげる蛇が数匹、視界に入った。
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