表記について

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9

彼の手に、少し力が加わる。
「ーー心配しないで下さい」
私の言いたい事が、何と無く分かったのか…。
彼は強い光を瞳に宿したまま、それでも優しく微笑む。

「そう簡単には倒れるつもりはありません。それにーー」
彼の手がもう一度、今度は向かい合ったままーー肩に置かれた。
真剣な、有無を言わせぬ表情の彼の目に、釘付けになる。

「もうあなたを……独りにはしません」
「…アツシさん…」
ゆっくりと近付く顔に、視界が全て覆われて。
「だから、どうか……」
「でも……。ーーー!」
柔らかく温かな感触が、完全に言葉を遮った。

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でも、それは一瞬。
「ーーセツナ」
「………」
ごく近く、瞳の輝きが眩く見える距離で。
彼は目を合わせて微笑み、額を触れ合わせた。
そうして名を囁かれると、まるで今この状況が、夢か幻のようにも思えてしまう。

「あなたが居れば…、それだけで」
まだ呆けたままの私の片頬に手を当て、一瞬更に目を細めて微笑むとーー。

彼は改めて、躊躇無くマントをはためかせ駆け出して行った。

長い剣を抜きながら、駆け往くあなたの背中が。
ーーとても、眩しく…大きくて。
あの背中に、そして何よりあなたの広く深い想いに守られているのだとーー。
その姿が、そして微かに残る温もりが……そう思わせてくれる。

もし端から見ると一見、無謀に飛び出したように見えるかもしれない。
でも彼の行動は、決してそうではないのだと、私には分かる。
彼はきっと、私を守りながらも的確に戦う為に……。
ーー共に戦い一緒に帰るために、そうした筈。

"あなたを独りにはーー”
その言葉はきっと、ただ口から出たものではなく…。
互いの意思で離れていた間、彼自身も思い悩んでいたからーーですよね。
遺跡で遭遇した竜との一件で、ひとり悩み苦しんで…。

その末に出した答えがーーきっと彼を強くし、輝かせている。

ーーアツシさん。私も…、あなたが居れば…。

彼の背中を見守りながら、改めて心の中で囁く。
私もあなたにたくさん…話したいことがあります。

……だから……。
きっと、揃って無事で此処を出ましょう…!

あなたに守られている安心感のもと、私もーー精一杯、あなたと共に戦います。
此処の探索を進める中で、きっと私自身もっと自信が持てるような…。
あなたとしっかり向き合えるような気がするから。
元は私の独断で踏み入った、この島の迷宮だけど……どうか一緒に。

ーーごめんなさい。そして、
「ありがとう…。」
戦う彼の背中に呟き掛けながら、静かに杖を構えた。
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