表記について

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1

杖を握りしめたまま、庭園の内部へとそろりと歩を進めた。
此処もまだ吹き抜けた天蓋から空が臨め、辺りがざっと見渡せる。
中央には石像の群れが建っているけれど、それでも僅かにでも向こうが見える程広い。

今見た限りで、確認出来る敵はーー。
武器や松明を持ったゴブリンの群と、棍棒を握ったサイクロプス一体。
アツシさんが引きつけてくれているのはーーゴブリン達。
なら後は、自由に動き回っているのは……。

確か、サイクロプスの弱点は。

この狭い空間では、あまりじっくり対策を練る暇もない。
なるだけ素早く、雷を呼ぶ呪文を紡ぐ。

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ーーと、その時。
「……セツナ!」
乱戦の音に混じり、アツシさんの切迫した声が響いた。
同時に、すぐ側で甲高い雄叫び。

ーーこの声は…、ゴブリン?!
まだ残っていた?!
ゴブリン達は確かに、ある程度の知恵の働く魔物。
視界が木や障害物に阻まれたその陰に、予め潜んでいたものが居てもおかしくない。
でも今、まさかこの時に。
こちらへ近付きつつある、巨大なサイクロプスを前にして…?
ーーそれぞれに、前後を取られた形になっている。
まずは、身の安全をまず守らなければいけないのも分かってる。
……けど、今詠唱を中断するのも…!?

迷っている間にも、ゴブリンが横手から飛び掛かってくる気配を感じーー思わず身を屈めようとした。

ーーと、その刹那。

「ーー覚者様!雷の力をその身に移すのです!」
先程通ってきた通路の奥から流れ来る、聞き覚えのある声。
雷の力をを体に纏う魔法を、以前確かに見た事がある。
初歩的な雷を撃つ魔法も、そう、そのひとが私に……。
当時の様子を瞼の裏に思い浮かべ、自らの身に纏うイメージへと重ねる。

ーー天翔ける雷よ…、我が身に力を……!

"祈り" の詞を唱えるように、短く念じる。
初めて使う大きな力を操るには、この方が良いと思えた。

自然の力を吸収し解放するように、手を大きく広げた瞬間。
ゴブリンの鋭い絶叫が、爆ぜる雷撃の音に混じり溶けた。

「セツナ…、無事で…!」
ゴブリンの群を斬り進みながら、アツシさんがこちらへ近付いてくる。
すると徐々にその姿は、雷の魔法の紫光に包まれてゆく。
自分では、全く初めての実践ながらも……。
どうやら、雷を纏う術は成功しているらしい。
だからといって気を抜くと、きっとその効果が消えてしまう。

「……まだ…!」
耳から入る雷の爆ぜる音と、視界に映る眩い紫電の光。
この感覚を、少しでも長く…!
杖を握る手に力が篭り、うっすら汗が滲む。
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