表記について

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2

初めて使う大きな術に、"祈り"の力を合わせたことでーー気力の消耗が早い。
そのうち、息切れをも伴ってきた。
でもまだ、敵は……。
サイクロプスも無傷で残っている。
ーー何とか、もう少し…!

額にもじわりと、汗が滲み始めた頃。
背後から、見えない力に押されるような感覚を得た。
けれど、決して強過ぎない、しっかり支え包まれるような力を感じる。
「ーー私の魔法を重ねます!」
更に大きく雷が散り爆ぜ、空間が紫電の幕に包まれたかのように。
辺り一面、眩く美しい紫に染まる。

同じ術の魔力が重ねられた事により、少し私の負担が和らいだ。
肩の力が僅かに抜けた事で、辺りを見渡す余裕が生まれてきた。

背後から力を添えてくれる声の主は、やはりあのひと……?
体の向きはあまり変えず、少し首を後方へと動かしてみる。
眩い光に包まれ、顔ははっきりとよく見えなかったけれど。
赤い瞳の覗く、優しい眼差しにはーー確かに見覚えがあった。

ーーそのひとーールインさんは、私とちらと目が合うと……。
記憶に残っているものと変わらない、柔らかい微笑み返してくれたように見えた。
緊迫した戦況下なのに、嬉しくなり…僅かに頰が緩む。

でも今は、気持ちを引き締めたままで居なければ。

優しく心強い微笑みの後押しに、まだもう少し頑張ろうと思える気力が沸く。
ルインさんから、見えたかどうかはわからないけれど…。
僅かに許される、息継ぎする程度の一瞬の間。
彼女への "ありがとう"、 の意味を込めた微笑みを返し向き直った。

微かに見てとれた、目を細め応えてくれる雰囲気に。
更に嬉しく、励まされる。

サイクロプスがこちらへゆっくりと向かってくる中。
その姿を見据えながら、更に魔力の放出を念じる。
ーーぱきり。
牙が折れる乾いた音と共に、ぐらりと巨体が揺らいだ。
「ーーさあ、今ですよ!」
脱力したサイクロプスが、よろめきながら膝をつくと同時に。
ルインさんが杖をかざしたまま、高らかに声を挙げた。
「ああ、任せろ……!」
彼女と繋がる雷の光を纏い、後方からまたしても新たな人影が飛び出してきた。

20150604-163706.jpg

紫電の光に包まれたその姿は、そのひとが元より持つ眩い輝きを更に増している。
強く眩い光で、その顔はやはり確認できない。

ーーけれど、そのひとが誰なのか……。
一振りの剣を携え優美な動きを見せるその姿はもとより、もはやその声だけでもーーはっきりと分かる。
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