表記について

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1

急ぎ扉を駆け抜けた先には、明るく広々とした空間が拓けていた。

躍り出た先はテラスのような石造りの足場、そして天井は無く…。
とても魔物が巣くう島とは思えないほど、光の射す方向を見上げた空は。
「ーー綺麗…」
雲間から覗く月光の美しさに、思わず呟いていた。
「ええ…」
共に見上げる彼も呟く。
追われ走っている間、生きた心地がしなかったからだろうか…。
青々と輝く光の降る光景が、より清々しく感じられる。

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「ーー皆さん、ご無事で何よりでしたわ」
ルインさんが緊張の解けた面持ちで、私たちの顔をゆっくり見回した。
その言葉を噛み締めながら、他の皆同様私もゆっくり頷く。
ーーもう少しで…。
それこそ皆、私の招いた危機に巻き込むところだった。
「…ごめんなさい…」
喉のつかえるような感覚、掠れる声。
申し訳なさと不甲斐なさが押し寄せるまま、俯いてしまう。

「……覚者様」
それでも、微かにそよぐ風に乗り流れ来る声は優しい。
ゆっくり視線を上げると、やはり柔らかい表情の、けれども強い光を湛える赤い瞳がそこにあった。
「この島の迷宮は、邪悪な思念の漂うような昏い空気に充ちています。そしてこの先、次々と魔物も襲いかかって来るでしょう。この先へ進むには……、相当の覚悟が必要でしょう」
その言葉の内容とは裏腹に、彼女の声も表情も落ち着き払っている。

ーーだからこそそれが、却って説得力を増す。
唇を噛み、声に出さない返事としてただ頷き返した。

「弱さを見せれば、魔物はーー邪悪な意思は、そこへ付け入ってきます」
ルインさんの、冷静な観点からの言葉。
それに対し私は、ただこの島に自分の求める答えを感情のままに探して…。

色々考えていたようで、けれどまるで深くは考えず立ち入っていたかも知れない。
ただただ、考えが甘いのかも知れない……。
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