表記について

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2

もういい加減、見限られても仕方ないと思えた。
ーーでも。
彼女の瞳は、私を真っ直ぐ見据えて。
口元は緩やかに、穏やかに開く。
「けれどあなた様には、今も私達が付いております。ーーどうかおひとりで……全て抱え込まないで下さいませな」

暖かい風に吹かれ、鈴の音が響いたように感じた。

「……まだ先は長いでしょう。参りましょうか」
イージスさんがマントを翻し、先を歩いてゆく。
「ええ。…さあ、先へ進む道を探しましょう」
ルインさんが一度にっこり微笑み、その後に続く。

「ーーはい…!」
それだけ言うので精一杯だった。
見られないようにそっと、袖で目の端を拭う。
まだ此処も、迷宮のほんの入り口に過ぎないだろう…。
ーーしっかり、そして皆の力を借りて…着実に歩まなければ。

自分自身を諫める気持ちに、肩に力を入れかけたその時。

背後で、ひゅっと空気が動いた。
無言で、何かが突きつけられるような感覚。
「……?!」
それが何かは、見えないままに。
けれども、直感的に危険を感じて冷やりとする。
今、この場には私達しか居なかった筈……?
何か居る、でも多分魔物ではない。
衝動的に、けれども恐る恐る振り向いてみる。

視線を向けた先には…確かにそこに、人の姿があった。
…いつの間に…?!
その人は眩く輝く金色の短剣を握り、刃先をこちらへ向けている。

「セツナ…?!」
駆け寄る声と姿。
けれど彼は、それ以上は動かなかった。
短剣の持ち主からは、殺気立った雰囲気は感じられない。
どちらかというと、楽しんでいるような…、まるで悪戯めいた笑みを浮かべている。
金色の刃は、何事もなくゆっくりと腰の鞘へと納められた。

「新たな覚者か…。持って三日、いや……。一週間、というところか」
ーーククク、と忍び笑いが後に続く。
その言葉は果たして、この迷宮の厳しさを物語っているのだろうか……?
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