表記について

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ーー暁の姫君ーー

四季織りなす美しき光景の広がる、巫女王の治めるとある島国。
そこには、それは大事に育て上げられたーー美しき王族の姫巫女が居た。
表向き滅多にその姿は見せず、その身内ですらも普段殆ど目にすることは無い。
されど国を挙げての祭事や祝事にはその姿を現し、見事な祈りの術を披露する。

そんな幻の存在ではありながら、人々を魅せてやまない姫巫女のことをーーそう呼ぶ者も少なくは無かった。

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深窓の姫巫女も立派に成長し、齢も成人と見なされる18を迎えたその日。
城を挙げての、そして固き門扉を開放した盛大な祝宴が催された。
人々は歓喜し、一目その姿を見ようと城へ詰めかけ…。
宴もたけなわになってきたのは、もはや夜も白んで来そうな夜更け。
それでもまだ飲み明かすと豪語するもの、遂にはすっかり宴席で舟を漕ぐもの、何時終わらぬとも分からぬ談笑に未だ華を咲かせているものーー。
浮かれ騒ぎ、また名残を惜しむ様々なもの達の姿が見受けられた。

ーーそんな、混沌とした状況とも云える中。
広間をそっと滑り出て……足早に歩く人影が、ひとつ。

石造りの廊下を、急ぎながらも滑らかな所作で歩いてゆくその姿はーー。
流れるように波打つ鮮やかな緋色の着物に、揺れる黒い髪。
その額には…様々な角度からの光で輝く、紅い石のはめ込まれた額飾り。
袖や裾の長い着物からは、顔や手の一部しか見えないが……。
透けるように白く艶やかな肌を持つ、若い女性である事が見て取れる。
その女性が、真っ直ぐに急ぎ向かう先は。
城の庭へと続く、階段の上がり口。

ーーやがて外の景色が、その眼前に広がり始める。
階段の手前で一度立ち止まり、外をーー庭の風景をゆっくり見渡す。
規則的に植えられた木々が門へ向かい立ち並ぶ、整頓された庭先。
そしてその木々が伸びる先、見上げた夜空には星が瞬いている。
まだ陽が昇らぬ暗いうちながら、眩しそうに目を細める。
そしてその表情が、ふわりと緩む。
その様はまるで、外の世界に憧れる安住の小鳥ーー。
彼女の置かれた立場からして、きっとそう言っても過言では無い筈だ。
何故なら、この女性こそ……。

「……様…、姫様!」
背後から投げかけられた声に、肩がびくっと揺れる。

ーーこの女性こそ、此の国の…。
そう、"暁の姫君"と呼ばれる姫巫女、そのひとなのだからーー。

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