表記について

・R指定表現のあるページには、(※R) を付けています。苦手な方は読み飛ばし下さいませ。
・最新の更新ページには、★をつけておきます。そして、画像を新に貼ったページには、☆をつけておきます。

7

姫の誕生日に起こった先の一件は、シキの取り計らいもあり公にはならず…。
以来、また城の中では平時と変わらぬ日々が続いていた。
その城の奥、姫が慎ましく暮らす部屋。
身の回りの世話を焼いてくれる侍女達と、部屋を度々訪れるシキ以外の者には滅多に顔を合わせる事が無い。
静かな広い部屋から窓の外を眺める姫の背中は、以前にも増してどこか少し寂しそうに見えた。

a2920892464d5d427a87d228841c6b1a_l.jpg

ーーそんな毎日が過ぎゆく中の、とある朝。

小洒落た欄干を隔てて朝陽の射す石造りの通路を、滑らかに進みゆく人影が。
此の城抱えの術師であり巫女一族の側近でもある青年、シキが真っ直ぐ城の奥へと向かっていた。
其の向かう先にある、ひとつの扉は。
ーーそう……、姫巫女の住まう部屋。

「ーー姫様。お早うございます」
普段と変わらぬ冷静な面持ちで扉を数回叩き、其の向こうへと声が通るよう呼び掛ける。
「ーーシキ?…どうぞ?」
「…失礼します」
部屋の中から主の声が伝わってくるのを待ち、取っ手に手をかけゆっくり開く。

姫の部屋へと、足を踏み入れざま。
何かを捉えたシキの目が、一瞬大きく見開かれる。
「…姫様…!」
後ろ手に慌てて扉を閉めながら、姫の許へと小走りに駆け寄ってゆく。

ーー日頃冷静沈着な彼が、何故珍しくもとっさの行動に出たのか。

何故か姫が、部屋の窓からーー。
その上半身を窓枠を越えて乗り出すように、外の様子を深く覗き込んでいたのだ。
それを目にした瞬間、流石にじっとしていられず自然と体が動いていたのだろう。
辛うじて体を支えている姫の腕へと、懸命に手を伸ばす。
「…あっ…」
姫の体が、シキのすぐ懐へ引き寄せられ、抱き留められた。
胸の中に収まった姫をーー大事そうに見詰め。
事無きを得てほっとしたように、シキは小さく息を吐く。

「何をなさっておられるのです…?!そのような危ない事をなされては…」
どことなく不安を感じていたのか…。
うっすら血の気の引いた、強張った顔を向ける。
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。