表記について

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6

皆が武器を、そして私も杖を納め、歩き出す。
歩き出す一歩目に躊躇する気持ちも生まれ、一瞬まごつく。
「…覚者様、大丈夫ですか?」
ルインさんの肩が軽く触れた。
微かな笑みとともに囁く問いに、何でもないと云った風に表情を繕って応えた。
「はい…大丈夫です」
「なら宜しいのですが…。先は長いです、無理はなさいませぬよう」
口調は穏やかながら真剣な目に、少しどきりとした。
いつも冷静に状況を見守るルインさんには、何もかもお見通しなのでは……?
はい、と頷きながら短く答え、また角を曲がる。
そこからもまだ、幾度か魔物の襲撃はあったものの…。
その数は少なく、さほど手間は取らずに進んで往けた。

更に下へと続く階段を降り、その先の間でまたしても扉に突き当たった。
どちらかと云うと重い心持ちで扉を開け、踏み入った。
今迄も薄明るいだけの、暗い通路や部屋を通っては来たものの。
今度は特に暗く、おどろおどろしい雰囲気の下り階段が現れた。
じっとり張り付くような湿気の籠もった深い闇の中、石段に散乱する腐肉から漂う臭気が鼻を突く。

まだ僅かに足を踏み入れただけなのに…。
まるで地獄への入り口、とでも云うような血塗られた光景。
ーーこの先には、一体何が…?
苔生したように感触の悪い階段を、恐々と降りる。
降りた先、少しでも明るい方を覗き込む。
……と、ここからでは天井が見えきらない、背の高い円形の部屋が見えた。

扉付近よりも更に空気が籠もっている感覚に、此処は行き止まりの部屋なのかと何となく思える。
通路に散乱する腐肉の様子に、きっと余程獰猛な魔物が居るのだろうと覚悟したものの…。
私達の足音しか聞こえない静けさを感じ、違和感を感じながら足を進めるーーその中で。
「な…!」
「あれは…?!」
先を往く二人の足がぴたりと止まった。

何があったのかと気になり……。
立ち尽くすその背へと、小走りに駆け寄り確かめてみる。

ーー魔物は居た。
その体は、高く遠い天井にも迫るかと思われる程大きい。
襲って来ないんじゃない。
……壁に鎖に繋がれていて、動けないんだ…。

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ならば、通路に散乱していた腐肉は、こうして経過していく時間の中でそうなったもの……?
この行き止まりの部屋の中には、魔物が居る他に何があるのだろう。
唯一、進める道を辿って此処へ出たのだから…。

ーーきっと、他にも何かが有る筈?
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