表記について

・R指定表現のあるページには、(※R) を付けています。苦手な方は読み飛ばし下さいませ。
・最新の更新ページには、★をつけておきます。そして、画像を新に貼ったページには、☆をつけておきます。

11

巫女王との謁見を終え、姫と二人の従者は揃って広間を後にした。
従者達は部屋へ帰る姫を送り届けるべく、共に並び通路を歩く。

ーー護り手の剣士、側近の術師。
彼等の瞳に映る姫の横顔は、それぞれにどう捉えられているのだろう。
…その心中は同じか、はたまた…。

2c998afff19dc3613fb105c5cc19b830_l.jpg

これまで全く縁の無かった二人の青年は、今は立ち位置を近しくして共に姫の側に居る。
けれど、それでもーー言葉を交わす事はなかった。

やがて部屋の扉の前で立ち止まった姫が、少し間を置いて振り返る。
「ーーふたりとも…ありがとう」
ふんわり微笑む姫に、イオリもシキも静かな笑みを返し軽く頭を下げる。
そして、その場を離れようとした二人の背後から…。

「あの…。イオリ様…」
姫の少し遠慮がちな、小さな声。
一方の名前が呼ばれた事で、二人の青年の視線が交差する。
「ーーはい」
イオリが姫に歩み寄る。
その後、姫は頬を染めながら部屋へ消えた。
引き返すイオリは、シキへちらと一礼しながら、側を通り過ぎ立ち去る。

二人が居なくなった、その後も。
春風吹き流れる通路に、シキは独り暫く佇んでいたーー。
風がやや強くそよぎ、欄干越しに並ぶ木々がざわめきを立てた。
その音を聴き、長い髪を揺らしながら立ち去る彼の後姿はーーどこか切な気に見えた。

※こちらのSSは、nana3さまより頂きました。
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。