表記について

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3

袖で頬を拭い、彼の背中を追いそっと後に続く。
どんよりと、昏い空気に支配されたこの島には…。
この先、やはり無数の魔物が巣くっているのだろうか?
先の見えない細い通路に、どこか底知れない不安に襲われながらも。
それでも……。
彼となら、共に進んでいけるのではないかーー。
今まで共に歩んできた、逞しい背中がそう思わせてくれる。
何処にも、根拠は無いけれど。

確かに進む毎に、通路の先から何かの物音が聞こえる…。
ーー今はとにかく、気を引き締めていこう。

通路の角を曲がった先には、結構な広さの空間が拡がっていた。
例えれば、領都の街の広場くらいはあるだろうか。
そして天井が少し崩れている部分があるからか、外からの月光が射し込み、自然と明るく先が見渡せた。
広間の行き止まり、壁のそそり立つ手前に……何かの影が動いているのが遠目ながら見えた。
複数の数が見て取れる、あれは……。

アツシさんが剣を静かに手に取り、更に慎重に進んでいく。
静かな空間に微かに響く、剣の刃の滑る音に、遠くに見えるその影がよく通る鋭い声を挙げた。
「ーーやはり…!」
アツシさんが剣を低く構えて駆け出す後ろで、私も素早く杖を構えた。
意識を集中し、私も彼と共に戦う…!
何度か聞いたことのある、次々と木霊する遠吠え。
あれはーー狼の群れ?
……それならば……!
素早い動きで回り込まれる前に、何とかその数を…!
狼に効果的な力はーー炎。

群れる相手に素早く対応するべく、慣れた術ーー炎の壁を立てる魔法の呪文を紡ぐ。
なるべくまだ、"祈り"の力は使わないでおこう。

前を見据えて呪文を紡ぐうち…。
こちらへ向かってくる影の正体が、段々はっきりと見えてきた。
そして、アツシさんがその長く重い剣を力強く大振りに振るっても、その影はまた起き上がるその理由がーー分かってきた。
群を成して襲いかかって来たのは…。

昏く鋭い眼光を宿した、普段見るものより険しい形相の狼だった。
体表は斑模様の毛に覆われ、凶々しさが際立って見える。

でも、恐れを感じている暇もない…!
何とか歯を食いしばり、気持ちを奮い立たせながら。
魔物から目を逸らす事なく、魔法の詠唱を続けた。
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