表記について

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6

「ーーイオリ…様…」
再び、姫が口を開いた。
「また、いつか……。お会い出来ますか…?」
姫とイオリの視線が、再び出会う。
泣き笑いのようになりながらも、そっと尋ねかける姫の微かな笑みは柔らかかった。
つられるように、イオリの表情も和らぐ。
そして彼が、口を開き何か言い掛けたときーー。

「ーー姫様」
姫の肩を掬うように、シキの袖が割って入り帰還を促す。
「ーーシキ…!」
「姫様。気付かれぬ内にお戻り頂かねば…私も庇い切れなくなりますよ」
その言葉に、出掛けた言葉を一度呑み。
「……。ーーでは、イオリ様…」
ばつが悪そうに俯き、呟くような小声で一言残し…姫はゆっくりと城の中へと戻りゆく。
直ぐに一度振り返り、何か訴え掛けるようにイオリに視線を戻す。
それを受けたイオリも、そっと微笑み返し小さく頷く。
「…イオリ殿」
シキが立ち止まり、振り返る。再び視線を合わせた二人の間に、僅かに沈黙が流れる。
「貴方には…追って正式に御指示があるでしょう。ーーそれまで勝手は控えられますよう」
口調は穏やかながら、どこか鋭い空気を纏うシキ。
その表情は、彼が姫に見せるものとはまた違っていた。
ーーそれは多分、役人としてのものではなく……。
イオリの目が細まり、静かに拳を握るのをその瞳に映しーー。
笑みともそれとは逆のものとも、判りがたい表情を浮かべたまま。
互いに辞令的にに軽く一礼する。
直ぐにイオリが礼を返すその間も、目を決して逸らさずかち合わせたままの二人は…やがて同時に背を向けた。

二人の青年がそれぞれの距離から振り返り、視線に捉えるのはーーただ静かに歩みを進める姫の姿。
その穏やかな横顔にそっと目を細め、自らの思いを胸に留めて。
それぞれにまた、前を向き歩みゆく。

姫と術師と剣士。
唐突に、けれども必然のように絡み合う三人の出会いはーー。
本人達にも知り得ないところで、静かに運命の歯車を回し始める。

生まれて初めての淡い想いを抱き始めた姫には、その想いの先に待つものが何か…勿論知る由もない。
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