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7

姫の誕生日に起こった先の一件は、シキの取り計らいもあり公にはならず…。
以来、また城の中では平時と変わらぬ日々が続いていた。
その城の奥、姫が慎ましく暮らす部屋。
身の回りの世話を焼いてくれる侍女達と、部屋を度々訪れるシキ以外の者には滅多に顔を合わせる事が無い。
静かな広い部屋から窓の外を眺める姫の背中は、以前にも増してどこか少し寂しそうに見えた。

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ーーそんな毎日が過ぎゆく中の、とある朝。

小洒落た欄干を隔てて朝陽の射す石造りの通路を、滑らかに進みゆく人影が。
此の城抱えの術師であり巫女一族の側近でもある青年、シキが真っ直ぐ城の奥へと向かっていた。
其の向かう先にある、ひとつの扉は。
ーーそう……、姫巫女の住まう部屋。

「ーー姫様。お早うございます」
普段と変わらぬ冷静な面持ちで扉を数回叩き、其の向こうへと声が通るよう呼び掛ける。
「ーーシキ?…どうぞ?」
「…失礼します」
部屋の中から主の声が伝わってくるのを待ち、取っ手に手をかけゆっくり開く。

姫の部屋へと、足を踏み入れざま。
何かを捉えたシキの目が、一瞬大きく見開かれる。
「…姫様…!」
後ろ手に慌てて扉を閉めながら、姫の許へと小走りに駆け寄ってゆく。

ーー日頃冷静沈着な彼が、何故珍しくもとっさの行動に出たのか。

何故か姫が、部屋の窓からーー。
その上半身を窓枠を越えて乗り出すように、外の様子を深く覗き込んでいたのだ。
それを目にした瞬間、流石にじっとしていられず自然と体が動いていたのだろう。
辛うじて体を支えている姫の腕へと、懸命に手を伸ばす。
「…あっ…」
姫の体が、シキのすぐ懐へ引き寄せられ、抱き留められた。
胸の中に収まった姫をーー大事そうに見詰め。
事無きを得てほっとしたように、シキは小さく息を吐く。

「何をなさっておられるのです…?!そのような危ない事をなされては…」
どことなく不安を感じていたのか…。
うっすら血の気の引いた、強張った顔を向ける。
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