表記について

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4

魔法喚び起こされた炎の壁が、煌々と立ち上がる中。
アツシさんも次々と剣を振るいーー狼達は着実に倒れてゆく。

炎の威力を少しでも強くと、念を込め高々と手をかざしているところへ。
「ーー!!」
炎に巻かれず、剣の攻撃をも免れた一体が、隙を縫って向かい来る。
逃げられない…⁉︎
ーー身近に危機を感じ、思わず息を呑んだ。
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「ーーちいっ…!」
背を向けていた彼が、ぐんと半円を描くように体を捻る。
こちらへまっすぐ伸ばされた剣が、鋭い唸りと共に風を切る。

私のすぐ目前にまで迫っていた狼は…。
敢え無く刃に掛けられ、そのままか細く短い叫びを挙げながら後方へと吹飛んだ。

床に倒れた狼を、彼は更に追い剣を振り下ろす。
そしてそれが完全に動かなくなると、僅かに辺りを見渡しーーこちらを振り向いた。
炎の勢いも徐々に静まり、私も杖をそっと納める。
「ーーセツナ様…」
剣を納めながら向かってくる彼に、思わず。
「ごめんなさい…、足を」ーー引っ張って。
「大丈夫ですか?……お怪我は?」
謝りかけたところへ、彼の優しい声がそれを遮る。

黙って首を振ると、彼はほっとしたように微笑み頷いた。

「…良かったです」
そう言って、また手を握り引いてくれる。
その優しさに、暖かさにーー。
気持ちがじわりと温かくなり、乱戦で走った緊張が解ける。

「ーー月明かりが射していますね」
彼の呟くような、けれども滑らかな言葉に。
改めて辺りを、そして天井を見上げてみる。

「とても…綺麗ですね。この空間も、そして……」
そこで、彼の言葉は一旦途切れた。
「いえ…。気を抜かず進みましょう」

私を見ながら促すその声は、とても柔らかかった。



ーーセツナ。
月明かりの下、儚げなあなたがとてもーー綺麗で。
けれど、今それを口に出してもあなたはきっと……ただ戸惑うばかりだろう。
そっと握ったその冷えきった手は、そして沈みがちな表情はーー。
きっと、ひとり暗い闇を彷徨い……未だその中を抜けきれず、悩み続けている故になのだろう。

あなたがまた、そっと優しく花開くような微笑みを返してくれるよう…。
何があっても、あなたを守り続けます。

ーー二度と迷わず、ただ正直に。



ーーアツシさん。
あなたはやっぱり…どこまでも優しくて。
何も言わず私の手を引くあなたの手が、とっても力強く温かくて…。
あなたと、今までと変わらず側に居たいーーそう思えます。
あなたが柔らかい眼差しで、優しく微笑んでくれるから。

一度は、あなたと離れようと決めた私の気持ち……。
ーー揺らぎそうです。
せめて、現実と離れたように思える、此処に居る間だけでも…。
あなたと、こうしていたい。

……どうか、ちょっとだけ……わがままを。
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