表記について

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5

穏便に、けれど厳しく語られる内容はーー。
そうとは知らずもイオリが姫に触れたこと、好意からと取れる言葉を囁いたこと。
ーーそれらを"禁忌" だと指しているのだ。
「…はい…。無礼を働きーー申し訳ありませんでした」
それでも彼の素直な態度に、姫の面持ちが益々暗く沈みゆくのを…再び瞳が潤むのを。
イオリ自身はどう受け止めただろう。
そっと…けれどぐっと拳を握る仕草は、彼の率直な気持ちを著すのか。

「そしてまた、本来なら…」
シキが姫の方を振り返り、一息置いて続ける。
「ーー巫女様の許し無き者に、姫様と口を利く事はは禁じられております。ですが今回は仕方のない事…。それは姫様ご自身もーーよくお分かりの事でしょう」
姫のか細い肩が、更に萎縮するようにびくりと震える。
そして、その目の端から滴が流れ落ちるのを目にするもーー。
何も進言出来ぬイオリは、ただ握った拳を更に震わせる。

ーーけれども。
シキの視線が再びイオリへと向かう時、それは自然と弛む。

それは、シキが厳しい言葉を連ねながらも…。
彼のその瞳に、沈鬱の陰が差していたからだろうか。
その様の云わんとするところ。
ーーイオリが微かに眉根を寄せる。
そしてそのまま二人はーー僅かな間、見詰め合う。

「…ですが、奇しくも貴方は…」
新たに紡ぎ出す言葉は、やはり流暢ながら…先程までと違い、やや掠れたような声音が混じる。
「其の背中の長剣。それは…先の儀式で巫女様より拝領されたものですね。ーー"竜の巫の護り手"として…」
反射的に姫の顔が上がる。
瞳に映るイオリの姿と引き換えるように、その頬を伝う涙が引いてゆく。
彼が今までに見た事のない、重厚な鈍い光を湛える剣を背負っているのは確かな事実。
……ならば……。
「…貴方も姫様も、禁を犯した事にはならない訳ですね。ーーいずれ顔を合わせられる間柄で在る…貴方との事ですから」
ふっ、と一旦微かに笑みを漏らし。
「イオリ殿。新進気鋭の貴方に…まさか此程迄に…」
ーーぼそりと呟く。

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