表記について

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8

二人で過ごすには、決して広くはないひとつの部屋のやや煤けた壁に。
窓からの街の明かりに、重なり合い揺らぐ影がぼんやりと映し出される。

どちらからともなく漏れる熱い吐息、そしてそれに乗り挙がる甘い声――。

いくら馴染んだ街だからと云って、以前はこうして部屋を共にすることの無かった二人だけに。
その時間を取り戻すように、そして今更ながらそれを惜しむように。

互いに身に着けているのは、たまに光を受けて微かに煌めく指輪だけ。
夜の闇に白く浮かび上がる、寝台に横たわる白くしなやかな躰。
それを抱き寄せ重なる、筋肉質の腕と逞しい躰、
――二人の唇が、指が、そして躰が重なり絡み合う度に。
内側に籠り堪らなくなった熱が吐息と囁きとなり、そしてか細い声となり吐き出され紡がれてゆく‥‥。

何度二人で共に熱を爆発させ、満ち足りた想いに浸ったのだろうか。
それは多分、とても長い時間。
けれど二人には、きっとあっという間。
遂には、二人の全てが一つになるのではないか、とすら思える程に重なり合い。
やがては互いに、心地よさすら感じる疲労に意識を堕としーー。
それでもしっかりと、汗に冷えゆく躰を温め合うように抱き合いながら眠り、朝を迎えるのだった。


ーー他には誰も居ない、二人だけの部屋。
惜しむように、取り戻すように‥‥そして、ただただ楽しむように流れる、愛おしい時間。

これからも先には、苦難が待っているのは分かっている。
それでも‥‥。

今この時だけはーーせめて快楽と幸せだけに満たされたい。
そんなささやかな願いを込めるように、二人の握り合う手の指輪の石は変わらず鮮やかな光を湛えていた。

まるで、その石自体に二人の‥‥いや、若しかするとまた別のーー意識が宿っているように。


ただありのままの、純粋な願いをーー。


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