表記について

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5

顔を上げた私に、ルインさんが続ける。
「本当なら、また直ぐにでも会いたかったのかもしれません。…大変だったお話もお伺いしましたけれど…」
ぴくりと肩が反応する。
先の遺跡探索では、本当に大変な思いをさせてしまった…。
俯きそうになる私に、彼女はすかさず笑顔を向ける。
「それは楽しそうにあなた方の話をされていたのも、印象に残っておりますわ」
「…そうですか…」
別れが突然だっただけに、どうしても後味の悪さも感じていた…。
でもその話に、少し安心できた。
「彼女達は…。"領都で少しやることがある"、と…仰ってましたわ」

ーー領都で?

「きっと彼女達なりに…少しでも力になれたらと思っていらっしゃるのですわ。大したことじゃないけれど、とは仰ってました」
何なのか気になったものの…。
彼女の口からは、それ以上は聞けなかった。
「……アツシ殿」
イージスさんが彼にそっと近付き、小声で何か話し合っている。
彼の表情が堅くなり、そしてまた普段のものに戻りーー笑顔になる。
ーー何の話だろう?
気になる事が、色々出来つつも……。

そうも言っていられない事が突如起きた。

庭園の中空。
突然、無の空間すら斬り裂くように。
静かに何の気配もなく現れた黒い影が、視界の端に映った。
ローブを被った、人型を取ってはいるもののーーまったく生気は感じられない。
ーー魔物? それとも…?

黒い人影は衣擦れの音すら立てず、黒い衣裳をさざめかせる。
浮遊しているというよりは、漂っているような動きで空中に留まっている。
その袖口には、明かりを灯したランタンを下げ…辺りを探るように揺らし照らす。

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